サステナビリティ,  農業

生命から仕事まで関係する?「遺伝資源」を守るための名古屋議定書とは?

みなさんこんにちは、みなみです。

みなさん、「遺伝資源」が近年、世界的に重要視されていることをご存じでしょうか。

 「遺伝子組み換え」という食品はよくニュースやスーパーなどで見かけますよね。でも、ここでいう遺伝資源というのはもっと幅広く、動物から植物、微生物までの生きて活動し繁殖するものを指します。

 また、遺伝資源にはもう一つ、「生物多様性」といったテーマも重要な役割としてかかわってきます。今回は名古屋議定書から遺伝資源と生物多様性とのかかわりについてみていきましょう。

名古屋議定書は国定的に結ばれた遺伝資源を守るための文書

まずはみなさん、学校で習った京都議定書は覚えてますか?

 京都議定書は1997年に日本・京都で開催した気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された、気候変動への国際的な取り組みを定めた条約のことです。COPというのは毎年国際的に 気候変動問題を解決すべく行われている、世界会議のことです。

 名古屋議定書は同じく国際的な取り組みを決めた条約のことなのですが、テーマは生物多様性における遺伝資源の利用について決まりを作るものです。

この議定書は2010年(平成22年)10月29日に生物多様性条約第10回締約国会合(COP10)において名古屋で採択されました。

 詳しい内容については、日本語版は日本政府が発表した公式訳、COPで公式に記された原本はこちらからご確認ください。 

 この、会議で話しあって決めた事を記した文書である名古屋議定書は世界の先進国がすべて入っているのかと思いきや、そうでもありません。個人的な印象としては、生物多様性が多く国の財産として守っていきたいと考えていそうな国も多く署名しています。環境省のページには

遺伝資源の利益配分は、生物多様性の保全等のためのインセンティブや原資ともなる

環境省「名古屋議定書について

とも、記されております。

本議定書は遺伝資源について生物多様性の分野で遺伝資源の公正な利用いついて、ご紹介していきます。

生物多様性のテーマとは

さて、ここで生物多様性という言葉についてもう少し考えてみましょう。

生物多様性がテーマにされているということで、多くの人はこの言葉を聞くとまず「様々な生き物の保護?」と思うかもしれません。

確かにその通り、さまざまな生物が世界に存在しており、なるべく多くの種の生物を守ることが目的です。

しかし、現実は期待に反し、毎年どんどん生物多様性は失われつつあります。

実は、2019年現在は国連の報告によると生物の4種類に1種類が絶滅の危機に瀕しているそうです。数にしてなんと約100万種。

 ここで、誰かが生物多様性を守るものを作らねばなりませんね。そうです。そのために名古屋議定書が採択されました。

 例えば、イギリスでは蚊の数が数年の苦労あって激減しました。これは人間側にとっては刺されないし、かゆくもならないし、生活に支障が出なくてハッピーなことですよね。では、生物多様性がなくなったら何か悪いことでもあるのでしょうか?

答えは「YES」。

 なぜなら、食物連鎖が我々の食生活、しいては生活基盤にかかわってくるからです。例えばミツバチはさすイメージがあって怖いですが、受粉の大切な役割を果たしてくれています。ミツバチが消えたら人間が手動でやるしかないですし、それはほかの虫に頼むことはできません。一見私たちにとって有害なものであっても、生態系を崩すと後々人間自らがその責任を負わねばならなくなってしまいます。これはつまり構成で責任を取るか、今できることをやって最低限の消失にとどめるか、が問われています。

生物多様性を守っていく中で、遺伝資源は大きな理由があります。

 遺伝資源の多く持っている国は、必然的に生物多様性がある国、つまりまだ多くの人類があまり足を踏み込んでいない土地が多いラテンアメリカや一部アジア、アフリカなどに多いといえるでしょう。

遺伝資源とは

さて、遺伝資源とは何でしょう。

 環境省によると、遺伝資源とは「有用な遺伝子を持つ動植物・微生物」のことを指します。ここでいう「有用」とは、人間にとって役に立つもの、ということですね。 生物多様性条約では生物多様性保全の一環として、遺伝的多様性保全の重要性が指摘されています。

 ですが近年では長い進化過程の末に残されてきた生物の遺伝資源は、その存在自体が貴重になっていて、人間にとっての有用性に関わらず保護を図るべきと考えられるようになってきました。

 栽培植物の原種の保護、家畜などの系統保護や野生生物の個体保護などは遺伝資源保護の観点からも重要な課題といえます。

 遺伝資源を守る場所として、ジーンバンクというものが存在します。ジーンバンクは生物多様性の保全を目的として野生・栽培植物の種子、野生・飼育動物の精子や卵子、微生物など、いろいろな遺伝資源を収集し保存する仕組み、またそのための専門機関および施設のことです。いわゆる遺伝子銀行みたいなものです。

 では、どこに遺伝資源と生物多様性の関係があるのでしょうか?それは、生物の多様性が遺伝資源の新たな発見を手助けしているからです。つまり、遺伝資源という貴重な資源が今後まだまだ必要となってくるかもしれないのに、生物多様性がなくなってしまっては遺伝資源を使った新薬や作物を作ることができません。

これまでにも、確かに様々な動植物などが絶滅してきました。

しかし、問題なのは絶滅すること自体ではなく、絶滅するスピードです。

遺伝資源保有国は、基本的に遺伝資源で議論に上がるのは国際的なやり取りに関してでしょうか。

遺伝子は生き物だけではなく、食材にも存在する

野生生物に限らず、遺伝資源は農作物や家畜等の品種や系統も重要な存在です。

 196の加盟国・EUから成りたつFAO(国連食糧農業機関)などでも作物遺伝資源を持続可能な形で利用していくことは大切といわれています。

 むしろ、我々が今普段食べている野菜は昔からそのままの形だったわけではなく、歴史的により良い遺伝資源を探し回ったおかげで立派に育ちやすく、おいしい作物を手に入れられるようになったといえるでしょう。

 作物の遺伝資源が世界的に広く認識され始めたのは1961年のFAOの会議だったと考えられています。

 作物が土地柄的にあまり豊富でなかったロシアやアメリカ合衆国・イギリスなんかは作物遺伝資源の研究と保全施設の整備をとくに力を入れて行いました(西川芳昭, 2005, p.15)。

 まず、作物に関する遺伝資源で有名なのは緑の革命ですね。緑の革命は簡単に説明しますと、1940年代から1960年代にかけて強い遺伝子を持つ作物同士を掛け合わせて人類にとって農作物の生産に適した作物を開発したり、化学肥料の大量投入などにより穀物の生産性が向上し、穀物の大量増産を達成したという一連の世界の変革のことです。

もう一つは遺伝資源の所有者は誰のものか、という問題です。

 最近あった国内の有名なニュースでは、和牛やシャインマスカットの遺伝資源が海外に持っていかれ、海外企業が利権を拡大していくパターンでしょうか。

 シャインマスカットは2018年7月25日放送の未来世紀ジパングの番組でも特集されていましたね。シャインマスカットは国内ではとても高価なものですが、とても安価で見た目もシャインマスカットそのものです。

 生活するために稼ぐ、経済活動の大幅な損失が出てしまうことは明らかでしょう。

 しかし、作物に関する遺伝資源については農家の人が作ったものである以前に、その土地で農家が存在する以前にベースが作られたということで利権は農家のみが持てるわけではありません。むしろ、農家が長年にわたって使ってきた品種を使用し続けることができるか、ということが一番大切です(西川芳昭, 2005, p.61)。今のところ、遺伝資源を持つ生物資源は存在する国のものであると考えられています。

作物の遺伝子組み換えなどに関心のある方は、こちらの こちらの本もどうぞ。

製薬業界も大きなかかわりを持つ

 また、イメージが付きにくいかもしれませんが、遺伝資源はなんと医療の分野でも特に使われています。

 遺伝資源はバイオテクノロジーやバイオ産業の大きな基盤となるものですので、バイオテクノロジーを特に使う医療業界では、遺伝資源は大変重要です。

 昔のケースですと、医薬業界で遺伝資源の問題になったケースはアメリカの医薬品開発企業がペルーの原生林のエキスを許可なく持ち出して新薬を開発したことでしょうか。

 どちらかというと、動植物などより微生物の遺伝資源が利用されるケースがおおいかもしれません。

 メリットが大きい中、日本にない海外資源を利用することもあります。その中で、いかに問題を作らずに遺伝資源を利用しつづけるか、がとても重要になってきます。

 そういう点で、医療業界の中で遺伝資源は今後も大変重要な役割を持っています。

おわりに―名古屋議定書は環境のためだけではなく、自らの身を守るためにもとても大事なもの

いかがでしたでしょうか。資源の利益配分は資源自体を持っている国とそうでない国お互いに平等にする、ということは難しいですね。それは、これまで世界で争いが起きたことからも明白でしょう。

国内での遺伝資源の問題についてはまだまだアメリカなどに比べて少ないと思われますが、今後どのような問題点・さらなる利点が出てくるか、注目のテーマです。

もちろん、国際的な締結分ですのでなるべく各国の利益は削除しきらないよう、利益をどのように確保するかということについて練られています。

 今後、各国垣根を越えてやり取りが広がってきたグローバル社会において、遺伝資源に関する扱いはどんどん重要に、行っていく必要がありそうですね。

Reference
環境省「名古屋議定書について」 http://abs.env.go.jp/nagoya-protocol.html
   「ABS 遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分」http://abs.env.go.jp/index.html
外務省「生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書
(略称:名古屋議定書)」https://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/st/page23_001940.html
外川健一「環境と資源 -主として金属鉱物資源,生物多様性を中心に-」経済地 理学年報 第 60巻 2014年 pp.249−263. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaeg/60/4/60_KJ00009780940/_pdf
西川芳昭(2005)「作物遺伝資源の農民参加型管理 : 経済開発から人間開発へ 」農山漁村文化協会。
河野和男(2001)「”自殺する種子” : 遺伝資源は誰のもの?」新思索社。
渡辺裕二(アステラス製薬)「製薬産業における遺伝資源利用の実際」 http://www.mabs.jp/archives/jba/pdf/220126_8.pdf

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000236484.pdf

jaJapanese