データセンターの水リスクとは?AI時代に「見えにくい水」をどう捉えるか
生成AIやクラウドが当たり前になって、データセンターは社会インフラそのものになりました。けれど、電力の話は盛り上がる一方で、水の話はまだ置き去りになりがちです。実はデータセンターは、冷却の方式や立地条件しだいで「地域の水ストレス」に直結する産業でもあります。水は電気ほど可視化されにくいので、気づいたときには地域の合意形成が難しくなっている、ということも起きます。
この記事では「データセンターの水リスク」を、投資・ESG・自治体・そして一人の生活者として理解できる形にほどいていきます。途中で海外事例も出しつつ、日本での論点も一つの見出しで整理します。読み終わったあとに、無理のない範囲で「自分にもできる小さな選択」を自然に考えたくなるような温度感を目指します。
目次
DATA CENTER WATER RISK の全体像(そもそも何が“リスク”なの?)

データセンターの水リスクは、ざっくり言うと「水に関して、事業が止まる・コストが増える・社会からの信頼が下がる」可能性の束です。S&P Globalの整理でも、水リスクは水ストレスへの暴露(どれだけ渇水・競合利用の影響を受けるか)と、施設の水効率(WUEなど)や規制・社会要請を含む広い概念として扱われています。 (S&P Global Sustainable1)
ここで大事なのは、データセンターの水が「飲み水」だけの話ではない点です。冷却塔で蒸発して戻らない水(消費)もあれば、取水して使って下流に戻す水(取水)もある。さらに、上水・工業用水・再生水(下水再生水)・雨水など、水源の質や地域の水ガバナンスによって社会的意味が変わります。
なぜデータセンターは水を使うのか(冷却方式が“水の設計図”)
データセンターが水を使う主目的は冷却です。特に「蒸発冷却(evaporative cooling)」は、空気を冷やすために水の蒸発潜熱を使うので、電力効率を上げやすい一方、水の消費が増えやすい。逆に「乾式(ドライ)冷却」は水使用を抑えられますが、気象条件によっては電力が増えたり設備コストが上がったりします。つまり「水を減らす=常に正義」ではなく、水・電力・コスト・信頼性のトレードオフ問題になります。 (Equinix Blog)
しかも最近はAIで発熱密度が上がり、「液冷(liquid cooling、直冷・液浸など)」が注目されています。液冷は熱の運び方を変えるので、施設全体の設計(冷却水温度、流量、熱交換、外気利用)まで連鎖して変わる。日本でもNTTデータが千葉県野田市で液体冷却技術の検証施設を開設し、冷水温度・流量の最適化などを検証すると発表しています。 (NTT DATA(2024/11/21))
「WUE」という指標:水の効率をどう見るか(ただし万能ではない)
水の議論でよく出てくるのがWUE(Water Usage Effectiveness)です。一般的には「データセンターがサイトで使った年間水使用量」を「IT機器の消費電力量」で割るような形で表され、IT負荷あたりの水使用を相対比較しやすくします。 (Equinix Blog)
ただし、WUEには落とし穴があります。例えば、
- 水源が上水か再生水かで、同じ“量”でも意味が違う
- 取水(withdrawal)と消費(consumption)を混ぜると誤解が出る
- 電力側の「間接水使用(発電に必要な水)」を含めるかどうかで見え方が変わる
なので、WUEは入り口として便利だけど、意思決定では「水ストレス地図」「水源の種類」「地域の水ガバナンス」「排水の質」まで一緒に見るのが現実的です(ここがAIO/SEO的にも重要で、単語としてのWUEだけ知っていても“勝てない”ポイント)。
水リスクは3層構造:PHYSICAL・REGULATORY・REPUTATIONAL

データセンターの水リスクは、よく次の3層で語られます。
1) PHYSICAL(物理)
渇水・高温・水温上昇・取水制限・水質悪化などで冷却が成立しない、または効率が落ちるリスク。熱波が増えると「乾式にすると電力が増える」「湿式にすると水が増える」という難しい局面が増えます。ドライやハイブリッドでWUEを下げられても、条件次第でエネルギーやコストが増える可能性がある点は、技術側の資料でも繰り返し指摘されています。 (Lux Research)
2) REGULATORY(規制・制度)
水価格の上昇、取水許可、用途制限、報告義務、環境影響評価(EIA)、自治体との給水契約条件など。S&P Globalの分析でも、水に関する規制(laws, policies, agreements, guidelines)が水リスクの構成要素として扱われています。 (S&P Global Sustainable1)
3) REPUTATIONAL(評判・社会的受容)
「地域が渇水気味なのに、巨大施設が水を使うのか」という納得感の問題。ここは数字だけでは解けない。透明性(どれだけ開示するか)と、地域の水インフラにどう貢献するか(再生水利用、漏水対策支援、流域での協働)がカギになります。オックスフォード大学の研究事例紹介でも、データセンターの水は“ゼロにすれば良い”という単純な話ではなく、文脈が重要だと述べています。 (Oxford Environmental Research Consulting)
「実際どのくらい使うの?」:規模感を掴む(ただし単位に注意)
水使用量は施設規模と冷却方式で激しく変わります。EESI(Environmental and Energy Study Institute)は、データセンターが年間で非常に大きな水量を消費し得ること、蒸発で失われる割合が高いことなどを整理しています。 (EESI)
企業開示の例では、Googleのデータセンター関連の水使用が注目されており、外部記事でも2023年の消費量が大きいことが報じられています(ただし企業・年度・定義で差が出るので、読み方は慎重に)。 (Japan Today)
Microsoftは環境サステナビリティ報告書で「water positive」などの目標を掲げ、水に関する進捗を報告しています。 (Microsoft Environmental Sustainability Report (PDF))
ここでのポイントは、「巨大=悪」ではなく、どの流域で、どんな水源を、どんな透明性で、どんな代替策をもって運用するか。水は地域固有性が強いので、同じ施設仕様でも場所が違うだけで倫理的意味が変わります。
海外の論点:水ストレス地域への立地と“説明責任”
海外では、乾燥地・水不足地域にデータセンターが建ち、地域の水と競合するのではという懸念が繰り返し報道されてきました(建設ブームとAI需要の加速が背景)。 (The Guardian)
一方で、技術的には「水使用を極小化する設計」も進みます。乾式・ハイブリッド・外気利用、そして液冷+乾式熱排出など、WUEを限りなくゼロに近づける選択肢が紹介されています。 (Lux Research)
ただ、技術が進んでも「地域が納得するか」は別問題です。だから最近は、単なる省水ではなく「水の補填(replenishment)」や流域での協働(water stewardship)を含めた戦略が前面に出やすい。ここが、次の国際フレームワークの話につながります。
国際条約・国際協定・国際フレームワーク:水リスクを“ルールの言葉”で語る

データセンターの水リスクは、企業努力だけで完結しません。水は流域とガバナンスの問題なので、国際的なルールや開示枠組みを知っておくと、ニュースや企業声明の読み解きが一気に楽になります。
1) 国際条約(トランスバウンダリー水)
- 国連「国際水路の非航行的利用に関する条約(UN Watercourses Convention)」は、国境をまたぐ河川・湖沼の公平・合理的利用などの原則に関わる重要条約で、2014年に発効しています。 (UN Watercourses Convention (PDF))
- UNECE「水条約(1992 Water Convention)」は当初地域条約でしたが、2016年以降、全ての国連加盟国に門戸が開かれた“グローバルな協力枠組み”として説明されています。 (UNECE FAQ)
データセンターが直接これらの条約当事者になるわけではないですが、「水は国境も越える公共資源で、ルールと協調が必要」という世界観のベースになります。
国際的な水ルールと地域調整:データセンターは何に向き合うのか
データセンターの水リスクは、単に設備の性能だけで決まるものではありません。水は地域の河川、ダム、地下水、工業用水道、下水再生水などとつながっており、立地する場所ごとに条件が大きく異なります。つまり、同じような建物でも、どこに建てるかによって水リスクの意味はかなり変わります。
そのため、国際的には「水は地域ごとの事情を踏まえて管理すべき資源である」という考え方が重視されています。とくに国境をまたぐ河川や流域では、公平で合理的な利用、周辺地域への配慮、関係者どうしの協力が重要な原則として扱われています。
1) 国際条約が示す「水は共有資源である」という考え方
- 国連「国際水路の非航行的利用に関する条約(UN Watercourses Convention)」は、国境をまたぐ河川・湖沼の公平かつ合理的な利用などを定めた重要な条約です。 (UN Watercourses Convention (PDF))
- UNECE「水条約(1992 Water Convention)」も、水資源をめぐる国家間の協力や、越境的な水管理の考え方を支える代表的な枠組みです。 (UNECE FAQ)
もちろん、データセンターそのものが条約の当事者になるわけではありません。ただ、こうした条約が示しているのは、「水は誰か一社だけで自由に決められる資源ではなく、地域や流域全体との関係の中で扱うべきものだ」という基本姿勢です。これは、今後データセンター立地が広がる地域でもかなり重要な視点になります。
2) 立地選定では「気候」だけでなく「水の入手性」と「地域事情」が重要
データセンターをどこに建てるかを考えるとき、多くの人は電力や通信回線、地震リスクをまず思い浮かべると思います。もちろんそれらは重要です。ただ、水を使う冷却方式を採用する場合、「その地域で安定して水を確保できるか」も同じくらい重要です。
たとえば、年間降水量が多い国であっても、ある都市や流域では夏季に取水制限が起きることがあります。逆に、乾燥した地域でも再生水や工業用水の仕組みが整っていれば、上水への依存を下げられる可能性があります。つまり、単純に「雨が多い国かどうか」だけでは判断できません。
この点で重要なのは、データセンターの水利用を「施設単体」で考えすぎないことです。周辺に住宅地が多いのか、農業利用が強いのか、工業用水の既存インフラがあるのか、再生水を利用できるのか。こうした地域条件によって、水リスクの性質はかなり変わります。
3) 水リスク対策は「節水」だけではなく「冷却設計の選択」でも決まる
データセンターの水リスクというと、「とにかく節水すればよい」と思われがちです。けれど実際には、問題はもっと設計寄りです。どの冷却方式を選ぶか、どの季節条件を前提にするか、どの温度域で設備を動かすかによって、水使用量も電力使用量も大きく変わります。
たとえば蒸発冷却は、水を使う代わりに電力効率を改善しやすい場合があります。一方で、乾式冷却は水を大きく減らせる可能性があるものの、外気温が高い時期にはエネルギー負荷が増えることがあります。 (Lux Research)
ここで大切なのは、「水を減らしたから正解」「電力を減らしたから正解」と単純には言えないことです。水不足が深刻な地域なら水の節約が優先されるべきですし、逆に水が比較的安定していて、電力系統の脱炭素化が課題の地域では、別の最適解があり得ます。データセンターの水リスクは、こうした地域別の最適化の問題でもあります。
4) 地域との摩擦を避けるには「水源の選び方」も重要
同じ量の水を使うとしても、「どの水を使うか」で地域への影響は変わります。上水をそのまま大量に使う場合と、再生水や工業用水を活用する場合とでは、地域住民が受ける印象も、インフラへの負荷も違ってきます。
そのため、今後のデータセンターでは、単なる使用量の多寡だけでなく、「生活用水と競合しにくい水源を使えるか」が大きな論点になります。特に都市近郊では、人口増加や気候変動の影響と重なることで、水利用への目線はより厳しくなるはずです。
この視点は、自治体にとっても重要です。企業誘致の段階で電力や雇用だけを見るのではなく、「その施設はどんな水を、どのくらい、どの季節に必要とするのか」という設計条件まで理解しておかないと、あとからインフラ負荷の問題が表面化する可能性があります。
5) 事業者に必要なのは「派手な宣言」より、地味でも確実な水管理
水リスク対策として本当に効くのは、派手な言葉よりも、むしろ地味な実務です。たとえば、冷却方式の選定、取水条件の確認、再生水利用の検討、季節変動を見越した運転計画、水温上昇時のバックアップ設計、地域インフラとの整合などです。
とくにAI向けの高密度計算では発熱が大きく、従来よりも冷却条件が厳しくなりやすいです。だからこそ、設備更新のタイミングで「いままで通りの冷却」で済ませるのではなく、液冷やハイブリッド冷却も含めて、水とエネルギーの両面から見直す必要があります。
結局のところ、データセンターの水リスクに強い施設とは、「水を使っていないように見える施設」ではなく、その地域の条件に合わせて無理のない設計をしている施設です。ここを見誤ると、水不足の時期や高温時に、一気に弱さが出てしまいます。
JAPAN:データセンターと水インフラ(工業用水・立地政策・冷却の現実)
日本は相対的に“水が豊か”と言われがちですが、データセンターの集積が進むと話は別です。特に冷却水の安定確保は、立地判断に直結します。経済産業省の審議資料でも「データセンターの立地判断に重要な冷却水の安定確保」を工業用水道事業制度の枠組みの中でどう実現するか、という論点が明確に示されています。 (経済産業省(PDF))
また、千葉県はデータセンター集積地としても語られ、印西市周辺の施設では地域インフラ(共同溝など)に水配管や空調用の配管が組み込まれている例が紹介されています。 (SCSK(印西キャンパス)) 同じ千葉でも、野田市で液体冷却の検証施設が動き出しているのは象徴的で、AI時代の冷却方式転換が国内でも現実に進んでいることを示します。 (NTT DATA(2024/11/21))
そして首都圏の水は、利根川・荒川・多摩川など複数水系に依存しています。東京都水道局も水源ダム等の貯水状況を日々公開し、渇水懸念期に情報発信を行った経緯を示しています。 (東京都水道局(2023/10/26))
ここから読み取れるのは、「日本だから水は無限」という理解では、自治体・事業者・住民の対話が噛み合わなくなる可能性がある、ということです。水は地域ごとに制約条件が違うので、今後は「冷却水をどう確保し、どう説明し、どう代替していくか」が日本でも正面テーマになっていくはずです。
事業者が取り得る対策:技術とガバナンスはセットで効く
水リスク対策は、設備の話だけに見えて、実は「情報」と「関係性」が同じくらい効きます。
技術:WUEを下げる/水源を変える/熱を賢く捨てる
乾式・ハイブリッド・液冷+乾式熱排出などで、サイトの水使用を大きく削減できる可能性があります。 (Lux Research) また、同じ“水使用”でも、上水ではなく再生水や工業用水を使えるのか、地域インフラと合意形成できるのかで社会的意味は変わります。
2) ガバナンス:流域での協働(Water stewardship)
CEO Water MandateやAWS Standardのような枠組みは、「自社の節水」だけでなく、流域全体での持続可能性を前提にします。 (CEO Water Mandate) 水は“自社敷地内”で閉じないので、地域の水道事業者、自治体、住民、他産業との関係設計が重要になります。
昔から冷却水を使ってきた産業は、どう向き合ってきたのか
データセンターの冷却水が注目されると、「でも冷却水を使う産業って昔からたくさんあるよね」と思う方は多いはずです。実際、その感覚はかなり正しいです。発電所、化学工場、製鉄所、紙・パルプ工場などは、データセンターよりずっと前から大量の冷却水を必要としてきました。日本の工業用水でも、冷却用水・温調用水は主要な用途の一つとして位置づけられており、経済産業省の工業統計でも独立した用途区分として扱われています(経済産業省, 2021)。参考
では、昔からの産業は水の問題にどう向き合ってきたのでしょうか。大きく言えば、「大量に使わないようにする」だけではなく、「立地を選ぶ」「一度使った水を循環させる」「生活用水と競合しにくい水源を使う」という考え方を積み上げてきました。このあたりは、今後データセンターを考えるときにもかなり参考になります。
立地の段階で、水を確保しやすい場所を選んできた
昔から冷却水を多く使う産業では、建設後に水を探すのではなく、最初から「その地域で水利用が成り立つか」を見て立地を決めるのが基本でした。発電分野では特にわかりやすく、米国地質調査所(USGS)でも、熱電発電における冷却方式として「once-through cooling(取水した水を熱交換後に戻す方式)」と「recirculating cooling(冷却塔や池などを使って循環させる方式)」が区別されており、いずれも水源条件と切り離せない仕組みとして整理されています(USGS, n.d.)。参考
日本でも、工業用水は昔から「工業用水道」「地表水」「井戸水」「回収水」など複数の水源で支えられてきました。経済産業省の工業統計では、工場の用水がこうした複数の水源区分で整理されており、産業側が上水道だけに依存してきたわけではないことがわかります(経済産業省, 2021)。参考
「一度使って終わり」ではなく、回収水を回してきた
昔からの産業で特に重要なのは、「回収水」を使う考え方です。経済産業省の工業統計では、回収水は「事業所内で一度使用した水のうち、循環して使用する水」と定義されており、冷却塔、戻水池、沈でん池、循環装置などを通すかどうかを問わず、再び使う水として扱われています(経済産業省, 2013)。参考
実際、日本の製造業ではこうした回収水の活用がかなり進んできました。2020年工業統計調査の「利用上の注意」では、淡水の回収率が示されており、工業用水は「新しい水を取って使い切る」よりも、「回して使う」比重が高い産業構造になっていることが読み取れます(経済産業省, 2021)。参考
この点は、データセンターにそのまま当てはめることはできないとしても、「冷却水を使うこと」自体より、「どれだけ循環設計を組み込めるか」が重要だという示唆になります。
生活用水とは別系統の水を使う発想も、昔から一般的だった
冷却水利用産業では、生活用水と同じ水をそのまま大量に使うのではなく、工業用水道や再利用水を組み合わせる発想も古くから見られます。日本の工業用水政策でも、工業用水道は産業活動を支える独自の基盤として整備されてきましたし、近年の経済産業省資料でも、データセンター立地にとって「冷却水の安定確保」が重要な論点として扱われています(経済産業省, 2025)。参考
また、日本の水再利用に関する研究でも、工業部門は再利用水の受け皿として重要であり、淡水需要の削減に役立つことが指摘されています(Mukoyama, Shimizu, & Fujiwara, 2020)。参考
昔からの産業も、「渇水や高温の時期」を前提にしてきた
もう一つ大事なのは、昔から冷却水を使う産業ほど、「平常時」だけでなく「厳しい時期」を前提にしてきたことです。OECDも、水資源の配分や産業利用をめぐる議論の中で、水は地域によって過剰配分や競合利用の問題を抱えやすく、利用調整が必要になると整理しています(OECD, 2015)。参考
つまり、昔からの産業がやってきたのは、「冷却水を使うか使わないか」の単純な二択ではありませんでした。水が厳しい時期でも成立するように、立地、水源、循環、設備余裕を組み合わせてきたのです。データセンターの水リスクも、本質的にはこの延長線上にあります。新しい産業だから特別なのではなく、従来産業が長年積み上げてきた「冷却水との付き合い方」を、AI時代の都市近郊インフラにどう移し替えるかが問われている、と言ったほうが実態に近いと思います。
データセンターが従来産業と少し違う点
ただし、データセンターには従来産業と違う面もあります。製鉄所や大型発電設備は、歴史的に臨海部や工業地域に立地することが多く、水利用を前提にした地域インフラと結びついてきました。一方でデータセンターは、通信需要や電力系統、都市近接性の観点から、より生活圏に近い場所に集積しやすいです。そのため、同じ「冷却水利用」でも、住民生活や自治体インフラとの距離が近く、社会的な目線が向きやすい分野だと言えます。
だからこそ参考になるのは、昔からの産業が取ってきた「地味だけれど効く方法」です。つまり、水を大量に使うこと自体を感情的に善悪で裁くのではなく、「どの水を、どこから、どれだけ、どう循環させるのか」を最初から設計に入れることです。この視点がないままデータセンターだけを議論すると、水問題の本質を外しやすいですし、逆にこの視点があれば、かなり冷静に議論できます。
参考文献(APAスタイル)
- 経済産業省. (2021). 2020年工業統計調査 利用上の注意. https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/result-2/r02/kakuho/sangyo/pdf/2020-k3-riyou.pdf
- 経済産業省. (2013). 工業統計調査 利用上の注意. https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/result-2/h24/kakuho/youti/pdf/h24-k4-riyou-j.pdf
- 経済産業省. (2025). 第19回工業用水道政策小委員会審議資料. https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/chiiki_keizai/kogyoyo_suido/pdf/019_02_00.pdf
- Mukoyama, T., Shimizu, Y., & Fujiwara, T. (2020). Water reuse and recycling in Japan. Water Cycle, 1, 93-103. https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/bitstream/2433/287040/1/j.watcyc.2020.05.001.pdf
- OECD. (2015). Water resources allocation: Sharing risks and opportunities. https://www.oecd.org/content/dam/oecd/en/publications/reports/2015/04/water-resources-allocation_g1g507d6/9789264229631-en.pdf
- U.S. Geological Survey. (n.d.). Thermoelectric power water use. https://www.usgs.gov/mission-areas/water-resources/science/thermoelectric-power-water-use
私たち(利用者・生活者)側の視点:水リスクは“遠い話”ではない

データセンターの水リスクは、技術者や投資家だけの話に見えるかもしれません。でも、クラウドもAIも、結局は私たちの選択で伸びます。
だから私は「全部やめよう」ではなく、「見える化に反応できる消費者になる」方向が現実的だと思っています。例えば、企業やサービスのサステナビリティ報告で「水」をちゃんと語っているかを一回だけ見てみる。WUEという単語があるか、取水源の説明があるか、水ストレス地域での対応が書かれているか。小さなチェックだけでも、世の中の透明性は確実に押されます。
もし本で全体像を掴みたいなら、「ウォーターフットプリント」「企業の水リスク」みたいなキーワードで体系的に読むのがおすすめです。
最後のリンクは一見データセンターと関係なさそうですが、私はこういう「自分の生活の水感度」を上げる行動が、回り回って社会の要求水準を作ると思っています。節水って、我慢大会じゃなくて「設計」で楽になりますしね。
まとめ:水リスクは「AI時代のインフラ倫理」になっていく
データセンターの水リスクは、単に“水を使う”という話ではありません。冷却方式、立地、流域の水ストレス、制度、そして説明責任が絡み合う「インフラ倫理」の問題です。
そのほかのサステナビリティなどに関する情報については、こちらよりご覧ください。
それでは!
参考文献(APAスタイル)
- Alliance for Water Stewardship. (2019). AWS International Water Stewardship Standard (Version 2.0). https://a4ws.org/wp-content/uploads/2019/03/AWS_Standard_2.0_2019_Final.pdf
- CDP. (n.d.). Water security. https://www.cdp.net/en/disclose/question-bank/water-security
- Environmental and Energy Study Institute. (2025, June 25). Data Centers and Water Consumption. https://www.eesi.org/articles/view/data-centers-and-water-consumption
- Global Reporting Initiative. (2021). GRI 303: Water and Effluents 2018. https://globalreporting.org/pdf.ashx?id=12488
- International Organization for Standardization. (2025). ISO 14046:2014 Water footprint — Principles, requirements and guidelines. https://www.iso.org/standard/43263.html
- Microsoft. (2025). 2025 Environmental Sustainability Report. https://cdn-dynmedia-1.microsoft.com/is/content/microsoftcorp/microsoft/msc/documents/presentations/CSR/2025-Microsoft-Environmental-Sustainability-Report.pdf
- NTT DATA. (2024, November 21). データセンターにおける液体冷却技術の活用推進に向けて(Data Center Trial Field). https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2024/112100/
- S&P Global Sustainable1. (2025, September 15). Beneath the surface: Water stress in data centers. https://www.spglobal.com/sustainable1/en/insights/special-editorial/beneath-the-surface-water-stress-in-data-centers
- Taskforce on Nature-related Financial Disclosures. (2023). TNFD Recommendations (v1.0). https://tnfd.global/recommendations/
- United Nations. (1997). Convention on the Law of the Non-navigational Uses of International Watercourses. https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/conventions/8_3_1997.pdf
- United Nations Economic Commission for Europe. (2020). Frequently asked questions on the 1992 Water Convention. https://unece.org/environment-policy/publications/frequently-asked-questions-1992-water-convention
- 経済産業省. (2025). 第19回工業用水道政策小委員会審議資料. https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/chiiki_keizai/kogyoyo_suido/pdf/019_02_00.pdf
- 東京都水道局. (2023, October 26). 水道水源となっているダム等の貯水量等の情報提供について(報道発表). https://www.spt.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/10/26/02_04.html
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